香り

今、良斗は意中の女性(ひと)がいる。同じ会社の OL で、二歳年上である。
彼女の名前は、山本百合。
容姿は、お世辞にも良いとは言えないが、笑うと頬に笑窪が出来て、明るい笑顔になる。
彼女は、母性本能が強いのではないかと、良斗は思っている。
入社当時、デスクが隣だったから、いろいろと彼女に教えて貰うことがたくさんあった。
入社してから3年目の忘年会で、良斗は先輩たちにお酒を奨められ、気がつくと結構な量を飲んでいたのか、酔っぱらって寝てしまった。
どのくらい寝ていたのかわからなかったが、目が覚めると目の前に、山本さんの顔があった。
「あっ、起きた、起きた。気分はどうかな?」
「あれ・・・?ボク、どうしたのかな?」
「酔っぱらって、寝ちゃったのよ」
「皆さんは?」
「カラオケ行ったり、帰った人も」
「そうなんですか。で、山本さんは?」
「みんなが、良斗君の面倒を見ろって。仲いいんだからって」
「すいません。僕のために、割食っちゃったみたいで・・・」
「気にしない、気にしない。でも、少しは気分良くなった?」
「ええ、もう大丈夫です」
「ねえ、良斗君今からどうするの?どこかでもう一杯飲む?それともカラオケでも行く?」
「もう、お酒はいいです。カラオケも得意じゃないし・・・」
「じゃあ、帰ろっか」
「そうですね。帰りますか」
良斗は、立ち上がったが、足がもつれてまた座り込んでしまった。
二人は、駅に向かって歩き出した。
帰る電車の方向は一緒だった。
良斗の方が二駅ほど近い。
良斗の下車駅が近づいても、良斗は目を覚まさない。
百合さんは、良斗を起こした。
「良斗君、もう駅につくわよ。目を覚まして」
「うっ、うぅ~ん」
「乗り越しちゃうわよ!」
百合は、仕方なく良斗を抱えるようにして一緒に降りた。
「ねえ、良斗君。駅からどうやって帰るの?」
「あっ、う~ん。バスだけど、もうバスはないから、タクシーだね」
二人は、タクシー乗り場の列に並んだ。
良斗のマンションに着き、エレベーターで5階の502号室が良斗の部屋だ。
良斗を抱えるようにして鍵を開け、室内に入った。
リビングの隣に寝室があり、扉を開けて良斗をベッドに寝かせ、スーツを脱がせていった。
良斗を抱えて寝室に入った時、部屋の隅に洗濯物を干すスタンドがあり、掛かっている洗濯物にちょっと違和感を覚えたが、良斗が
気にかかって良くは見なかった。
百合は、キッチンに行き水をコップに入れ、寝室に戻って来た。
良斗は、まだ酔いが覚めないのか本格的に寝入ってしまったようだった。
「どうしよう・・・。良斗君、起きそうにもないし」
百合の目が、さっき違和感を覚えた部屋の隅の洗濯物に止まった。
側まで行ってみて、驚いた。
それは、両端に可愛い絵柄がプリントされた赤ちゃんの布おむつだった。
「えっ・・・何で良斗君の部屋に、赤ちゃんの布おむつなんかがあるの?」
布おむつに隠れるように、可愛い絵柄のパンツも干されていたが、良く見るとビニールが裏打ちされた、左右にホックが並んだおむつ
カバーだったのだ。
それも、赤ちゃん用の小さいものではなく、大人が使用出来る大きなものだが表面に張られた生地は、なんとも可愛いらしく赤ちゃん用
顔負けの可愛いさだったのだ。
『このおむつって・・・。良斗君のものなの?じゃあ、オネショしちゃうのかな良斗君』
百合は、悪いとは思ったが、クローゼットや収納ケース等を調べて見た。
収納ケースには、たくさんの布おむつが詰まっていて、そのどれもが可愛い柄付きである。
また、他の収納ケースには、赤ちゃん用よりもさらに可愛い柄のおむつカバーが何枚もあり、一緒によだれ掛けやベビー帽子まで入って
いたのです。
ここまで見れば百合にも、想像がつきました。
『良斗君は、おむつマニアの幼児願望の持ち主なんだ』
百合は、良斗が寝ているベッドの側に行った。
『どうする、良斗君。君の秘密を知ってしまったわ。それにしても、可愛い寝顔ね。やっぱり、赤ちゃん願望だからかなあ』
良斗は、そんなこととは知らずに、あどけない寝顔で、スヤスヤと眠っていた。
百合は、ハッと思った。
『良斗君、このままで大丈夫かな?オネショ・・・しちゃったら、お布団濡れちゃうけど・・・』
独身の百合は、もちろん赤ちゃんを育てた経験などはない。
赤ちゃんのおむつさえ替えたことなどはない。
まして、大人のおむつなんて・・・
見たのが今日、初めてなのだ。
百合は、スマホで検索してみた。
赤ちゃんのおむつ替えは、両足を掴んで上にあげておむつをお尻の下にいれるが、大人は重いので横に寝返りみたいにしてから、おむつを
敷くみたいな感じらしい。
百合は、とにかくトライしてみることにした。
まず、おむつの準備からだ。
ベッドの向こう側に白いタンスが置かれていて、四段引出しの各引出しに可愛らしい動物が描かれていた。
上から開けて見ると、赤ちゃんのベビーダンスと間違えるように、可愛い絵柄のおむつカバーがたくさん入っていた。
二段目は、よだれ掛けに食事用なのか大きめのエプロン、フリルの付いたベビー帽子、指の無い手袋、確かミトンっていうと思う、
おしゃぶり等の小物がたくさん。
三、四段目は、布おむつがぎっしり。
百合は、二段目の引出しの隅に本のようなものがあったのに気がついていた。
取り出して開いて見ると、中は良斗君の写真が整理されて貼られていた。
それも、全て赤ちゃんの良斗君だった。
百合は、良斗のことも忘れたように見入ってしまった。
セルフ撮影にしては、良く撮れている。
いろいろなシーンが撮られている。
布おむつがたくさん当てられて、大きく膨らんだおむつカバーのアップ、お洩らしでぐっしょりと濡れた布おむつ、ミルクの入った
哺乳瓶を両手で持って飲んでいるシーン、大きなお尻を振りながらハイハイしている所、立ち上がって分厚く重ねたおむつで両足が閉
じられずにいるシーン等、どれもこれも赤ちゃんに負けない大きな赤ちゃんの良斗君だった。
「う、うぅ~ン。はぁ・・・」
百合は、声の聞こえた方へ目をやると、良斗がもぞもぞと体を動かした。
「あれ、良斗君、目が覚めたのかな?」
百合は、良斗の顔を覗きこんだ。
良斗は、未だはっきりと目が覚めないのか、百合には気づかない。
「良斗君。良斗君。目、覚めた?」
「うう~ん」
良斗は、だんだんと目の焦点があってきたのか、目を開いた。
目の前に百合の顔があった。
「あっ、山本さん。おはようございます」
良斗は、状況がわからないのかトンチンカンな返事をした。
「何言ってるの、まだ、夜中の12時を回った所よ」
「ここは・・・。僕の部屋?」
「そうよ」
「僕の部屋に、なんで山本さんがいるの?」
「私が、酔っ払った良斗君をここまで連れて来てあげたんじゃない!大変だったのよ」
「それは、ご迷惑をおかけしました。もう、大丈夫ですから・・・・」
良斗は、ここまで言ってハッとした。
僕の部屋、それも寝室・・・。
と、いうことは・・・。
僕の秘密が、山本さんに知られてしまった。
良斗は、唖然として山本さんを見つめていた。
「どうしたの?良斗君。鳩が豆鉄砲喰らったような顔して?」
「だって・・・。ここ、僕のマンションですよね?」
「そうよ。良斗君のお家」
「じゃあ、じゃあ、・・・見ちゃったんだ。アレを・・・」
「アレって?」
「・・・・・」
「言ってくれないと、見たかどうかわからないわよ」
「それは・・・」
「部屋の隅にたくさん干されている洗濯物のこと?」
「ああ、やっぱり見ちゃったんだ」
「そりゃあ、見るわよ。嫌でも目に入るもの」
「山本さん、お願いです。会社のみんなには内緒にしてください」
「そうねぇ。どうしようかなぁ」
「お願いします」
「良斗君しだいね」
「僕しだい?」
「そう。良斗君しだい」
「僕、新入社員でお金なんかありませんよ」
「バカねぇ。良斗君からお金なんか取らないわよ」
「じゃあ、どうしたら?」
「まず、なんで独身のあなたの部屋に、赤ちゃんのおむつ、それも今時珍しい布おむつがあるのか、教えて欲しいナ」
「それは・・・」
「それは?」
「山本さんって、いじわるです!」
「あら、何で?私は、良斗君のこと心配しているのよ」
「でも・・・」
「でも、なあに?良斗君は、こんなに大きくなってもまだオネショしてるの?」
「オネショなんて、しません」
「じゃあ、何でこんなに可愛いおむつ、たくさん持ってるの?」
「・・・・・」
「オネショなんてしないのに、良斗君はおむつ当ててるの?」
良斗は、山本さんの質問責めに答えられずにうつむいてしまった。
「おむつ、好きなの?」
「はい。・・・」
「何故?」
「何故なのか、良くわかりません。でも
小さい時から、おむつが気になっていました。赤ちゃんのおむつ替えシーンを良く見ていました」
「それで?」
「ある時、家で自分が使ったらしい布おむつを見つけたんです。おむつカバーも一緒にあったけど、カバーは小さくて、でも、カバーに
布おむつを重ねて自分で当ててみたのが最初でした」
「その時は、どうだったの?」
「すごく気持ち良かったです」
「それで、おむつが好きになっちゃったんだ」
「そうなんです。夜、寝るときにはいつもおむつをしていました」
「ふう~ん。お母さんやお姉さんにバレなかったの?」
「一度、お姉さんに見られた。お母さんには黙っててあげるけど、そんな変な遊びはやめなさいって・・・言われた。だけど・・・」
「だけど?」
「やめられなかった」
「なんで?」
「だって、おむつって、すごく気持ち良かったし、それに・・・」
「それに?」
「それに・・・。赤ちゃんみたいになりたかったんだ」
「それから、ずっと?」
「うん。お小遣いを貯めては、布おむつやおむつカバーを買ってきては、赤ちゃんみたいにおむつをしていたんだ」
「ずっと、おむつ遊びしてたんだ。おむつにお洩らしもしたの?」
「したかったけど、布おむつの洗濯が出来ないから・・・。ずっと当てるだけで我慢していたんだ。大学に入ってアパートで一人暮らし
になってからは、お洩らしも出来るようになって、すごく嬉しかったんだ」
「それにしても、可愛い布おむつやおむつカバーをたくさん持っているのね」
「ネットで通販で集めたんだ。いろんなベビー用品が揃っているんだけど、全部大人用なんだ」
「結構、高いんじゃないの?」
「大学時代は、アルバイトをして買ったけど、見るたびに可愛いから欲しくなって、いつの間にか増えてしまった」
「ところで良斗君、私今日ここに泊めてくれない?もう午前2時に近いし」
「山本さんがですか?」
「大丈夫よ。おむつの赤ちゃんを襲ったりしないから」
「わかりました。でも、どこで・・・」
「リビングのソファーでいいわよ。それとも、添い寝してあげようか?」
「えっ、添い寝?」
「ねっ、そろそろ寝ようか?明日は会社休みだからゆっくりとしてられるしね。
じゃあ、寝る支度ね」
「寝る支度って?」
「もちろん、おむつでしょ。赤ちゃんはおむつしてネンネでしょ?」
「・・・・・」
「おむつ、してあげる。おむつ、して欲しいんでしょ?ママになってあげる」
「えっ、山本さんがママに・・・」
「ええ、良斗君のママになって、おむつして赤ちゃんにしてあげるわ。どのおむつをするの?」
良斗は、可愛いシールが貼られた引き出しを指差しながら、
「キリンのシールの引き出しを開けてください」
百合は、キリンのシールが貼られた引き出しを開けた。
中には、布おむつがおむつカバーにセットされているものが何組か入っていた。
百合は、その中の一組を取り出した。
黄色地にスヌーピー柄で、布おむつもスヌーピー柄のように見えた。
百合は、その他のところから可愛い T シャツやよだれ掛け、ソックスなども取り出した。
クローゼットを開けると、なかにはベビー服や股間にホックが付いたロンパースなどがさがっていた。
紺色に黄色いピカチュー柄のロンパースを取り出して、おむつと一緒にベッドに持って行った。
百合は、良斗に言った。
「さあ、良斗君。準備できたわよ。おむつしてネンネしましょうね」
「本当におむつするの?恥ずかしいよ」
「何言ってるの。良斗君は赤ちゃんなんだから、赤ちゃんはおむつでしょ」
百合は、良斗が着ている服を脱がせて行った。
良斗を素っ裸にしてしまった百合は、びっくりした。
良斗の身体には、あるべきものが全く無かったからだった。
股間はもちろん、脇の下、両腕、両脚に至るまで、すべての体毛が全く生えてはなかったのである。
「キャッ!どうしたの?これ!ツルツルよ!」
「だって・・・。赤ちゃんは・・・」
「そうね。赤ちゃんはツルツルだもんね。とっても可愛いわよ」
百合は、良斗の両脚を掴むと、上へグイッと持ち上げた。
大人の身体は、赤ちゃんとは違って重いが良斗も協力して自分でも脚を上げていた。
ツルツルのオチンチンやお尻の穴までが丸見えになった。
良斗は、羞恥のためか全身を赤く染めている。
百合は、広げたおむつを良斗のお尻の下に滑りこませて、良斗の両脚を下ろした。
ツルツルのオチンチンが、興奮のためかピクピクと小さく上下しているのを見て百合は微笑した。
「良斗君、可愛いオチンチンがピクピクしてるよ。どうしたのかなあ?」
良斗は、答えられなかった。
百合は、ベッドの側に置いてあるベビーパウダーの缶を取り、蓋を外した。
付属のパフにパウダーをつけると、優しい赤ちゃんの香りが、広がっていった。
無毛の股間、再び両足を持ち上げ、お尻まで真っ白にすると、再び両足を左右に開きながら下ろし、百合は開いた両足の間に座った。
良斗の顔を眺めた。
されるがままの良斗は、目をつむり期待に胸を膨らませているのか、大きく胸を上下に動かしていいる。
百合は、前当ての布おむつを掴むと、ピクピクと震えているツルツルのオチンチンに当てていった。
「はぁ~ン・・・」
良斗が溜め息を洩らしている。
百合は、思った。
『おむつって・・・。そんなに、気持ちいいの?』
左右の横巻きおむつで、前当てのおむつを押さえ、おむつカバーの横羽根のマジックテープを止めた。
次に、おむつカバーの前当てを股間から前に持ってくると、左右に並んでいるホックに、“ パチン、パチン・・・” と、音を立てて留めた。
腰紐と股紐を、蝶結びにして結んだ。
百合は、おむつカバーからはみ出している布おむつを押し込むと、おむつカバーの上から軽く、“ ポン、ポン ” と叩き、
「良斗君、おむつできたよ。可愛い赤ちゃんですね」
と、云った。
T シャツを着せ、頭からロンパースを被せて着せ、股間のホックを留めて行った。
ちょっと、寒そうなので厚地のタイツを穿かせた。
胸に、スヌーピーのよだれ掛けを当て、オシャブリを咥えさせると、大きな赤ん坊が誕生した。
百合は、赤ちゃんになった良斗に、添い寝をしながら、頭を優しく撫でていた。
良斗は、いつしか百合の添い寝に安心したのか、眠りに落ちていた。
百合は、オシャブリを咥えたまま寝てしまった良斗の顔を眺めて思った。
『良斗君のママになっても、いいかもね
・・・」
百合も、いつしか寝てしまった。

           ☆☆☆

百合は、良斗の秘密を誰にも話さなかった。
会社では、いままで通りの関係を装っていて、誰も良斗と百合の関係を疑う者は現れてはいない。
そう!
あの日以来、良斗と百合の関係は・・・
『赤ちゃんとママ』
の関係になったのだった。
毎週末、二人は良斗の下車駅で待ち合わせている。
外食だったり、食材をスーパーで買い良斗のマンションで一緒に食べたりと、まるで結婚したかのようだった。
食事もママと赤ちゃんだった。
百合は、良斗のマンションに行くと、ほとんどお泊まりした。
まずは、お風呂だ。
良斗が、入浴の準備をしている間に百合は、良斗の赤ちゃん衣類を選んでおくのが常だった。
今夜は、ピンク系にしようと百合は思っている。
先週の日曜日に、二人は一緒に大きな赤ちゃんのためのお店に行った。
そこで百合が、良斗のために選んだものだった。
それも全て、キティ柄で統一したのだ。
サーモンピンクのキティ柄のおむつカバー、布おむつもベビーキティが散りばめられているドビー織り、キティの顔が大きく描かれた
ピンクのトレーナー、ロンパースは白地にいろいろな色で描かれたベビーキティで縁取りがピンク、よだれ掛けはピンク地に白の
キティの顔など、全てキティ柄のピンク系で統一されている。
これらを購入する時、良斗はすごく抵抗した。
「ええッー! これを着るの! やだよ。女の子みたいじゃない。ボク、男の子だよ」
「あら、いいじゃないの。赤ちゃんは性別関係ないわよ」
お店の女店員さんも、
「そうよ。赤ちゃんは男女、関係なく可愛いお洋服を着ていいのよ。こんなに優しいママがいるんだもの。ボクは幸せなのよ」
とうとう、百合と女店員さんに押しきられてしまいました。

お風呂で百合に全てを洗って貰い、湯船に浸かっている間に、百合も体を洗って一緒にお風呂を出ました。
ベッドに行くと、やはり先日購入したピンクのベビー服やおむつカバーが用意されていました。
「良斗君、今夜はとっても可愛い赤ちゃんになれるわよ」
百合は、そう言うとにっこりと微笑みました。
良斗が、いつものようにお尻を布おむつの上にのせると、百合はベビーパウダーの蓋を開けた。
寝室の中にベビーパウダーの優しい香りが広がる。
「いい香りね。赤ちゃんの匂い。私、大好きだわ」
と、百合がいつものように言った。
百合は、良斗の両足首をつかむと、“ ヨイショ!” と掛け声と共に持ち上げた。
良斗も、百合を助けるように自分から両脚に力を入れている。
ツルツルの股間から、お尻までベビーパウダーがかけられて、真っ白になった。
良斗は、このベビーパウダーをかけられるという行為が大好きだった。
おむつに興味を持ち始めた頃の良斗は、自分で両足を赤ちゃんのように持ち上げて、ベビーパウダーを振ると必ずというほど股間の良斗自身が大きく勃起して、布おむつを当てた途端に、射精したことが何度もあった。
今、百合に両足首を掴まれて、持ち上げられベビーパウダーをかけられている間に、その時のことが頭の中に甦っていたのか、良斗は遠くを見つめるような表情を浮かべて、うっとりとしていた。
女の子のようなピンク系のおむつカバーやベビー服を着せられて良斗は、等身大の鏡の前に連れて行かれた。
自分では、絶対に似合わないと思っていた良斗だった。
鏡の中の良斗は、まだ20代半ば、若い良斗は意外にも良く似合っていた。
良斗の背後から、肩越しに顔を覗かせている百合が、微笑ながら言った。
「良く、似合ってるわ。良斗君。とっても可愛い赤ちゃんだわ」

                 ☆           ☆          ☆

ソファーで良斗を膝枕にして、哺乳瓶でミルクを飲ませていた百合が、唐突に言い始めた。
「ねえ、良斗君。おむつと百合と、どちらが好き?」
「えっ、なんだよ、突然・・・」
「だから、百合がママになってる今、唐突だけど、どうなのかなぁ?って」
「百合は、いじわるだね」
「えっ、どうして?どうして百合がいじわるなの?」
「だって・・・」
「だって・・・、何?」
「そんな、答えられない質問をするからいじわるって、言ったんだ」
「・・・・・」
「百合とおむつは、僕にとってどちらもかけがえのない人と物なんだ。だから、どっち? と言われても選べることなんてできないよ」
「・・・・・」
「だから、百合にはずっとママになってもらって、いつまでも一緒にいて欲しいんだ」
「それって・・・。プロポーズ?」
「うん」
百合の顔が、これ以上ない笑顔になって行った。
その夜、二人は初めて男女の関係になった。
半年後、二人は結婚式を挙げた。
それ以上は、待てなかった。
百合のお腹が、目立ち始めて来ていた。
会社の上司や同僚たちは、びっくりしていたが全員が二人を祝福してくれた。
一年後、二人の間に女の赤ちゃんが生まれた。
名前は、『香穂里』
良斗は、この名前を譲らなかった。
百合は、いろんな名前を考えていたらしいが、良斗が固持した。
「ねえ、どうして『香穂里』という名前なの?」
「それは・・・」
「ちゃんと、教えて」
「言わなきゃ、だめ?」
「そう、ちゃんと教えてくれないと、もう、おむつも替えてあげないし、ママになるのもやめちゃうかもよ」
「ええっ、そんなぁ・・・」
「だったら、ちゃんと答えて」
「おむつに興味を持ち始めた頃、初めてベビーパウダーを使用した時に、すごく気持ちが良くなったんだ。パウダーの香りがそれ以来大好きになった。ベビーパウダーは赤ちゃんにとって大切な一つのアイテムだし、僕にとっても、いままでずっとそばにあったし、これからもずっとそばにあると思う。だから、大切なものの一つなんだ。子供だって、大切だしずっとそばにいて欲しいから『香穂里』って名前をつけたいと思った」
「わかった。私も賛成する。でも・・」
「でも、何?」
「娘が、大きくなって『香穂里』の名前の由来を聞かれたら、なんていうの?
パパのおむつを取り替える時の、ベビーパウダーの香りが大好きだったから、この名前にしたなんて・・・。口が裂けても言えないわよ!」
良斗は、下を向きながら小さな声で、
「・・・そだね。・・・」
と、言っただけだった。
「そんなに、落ち込まなくてもいいわよ。『香穂里』って名前、私も気に入ったしね。まあ、由来がちょっと、人には言えないけど秘密めいて、いいかも」

香穂里が生まれてそろそろ一年が過ぎようとしていた。
良斗は、香穂里とお風呂に入るのが日課だ。
百合が、浴室のドアを開けて、
「きれいになったかな?二人とも。おむつの準備ができたし、そろそろお風呂出なさい」
香穂里を百合が抱いて、寝室に向かった。
ベビーベッドと良斗のベッドに、それぞれのおむつが用意されていた。
香穂里のおむつに比べると、良斗のおむつは何倍も大きく、見比べるたびに良斗は、気恥ずかしさを感じていた。
そして、可愛らしさから見てみると、香穂里のおむつは、布おむつは二人とも柄付きでさほど差はないが、おむつカバーは、はるかに良斗の方が可愛いくらいのベビー柄だった。
香穂里ももう、ハイハイして動きがだんだん激しくなって来ていた。
香穂里を追いかける良斗も、ハイハイで追いかける。
おむつで膨らんだ大きなお尻を左右に振りながら、ハイハイしている二人を眺めている百合の顔に笑みがこぼれていた。

                    ☆        ☆        ☆

良斗は、百合の笑顔を見つめた。
一瞬、良斗は大人の顔をして “ ニッコリ”
とした表情を百合に見せた。
あの日、そう、忘年会の良斗の泥酔は良斗の策略だった。
母性本能の強い百合に、良斗をマンションに送らせ、ベビーグッズを見せた。
良斗に確信はなかったが、百合が断固として拒否はしないと思った。
大変な賭けだった。
しかし、良斗はその賭けに勝った。
香穂里は、後半年か一年後には、おむつがとれるだろう。
でも、良斗のおむつはこれからも外れることはない。
大人の笑顔の良斗に、百合は同じ笑みを返した。
『そうよ。良斗君。貴方はずっと百合の赤ちゃんでいいのよ!』
百合の笑顔は、良斗にはそう言っているように思えた。

                                            おわり