フィクションノンフィクション 59-3




 
 

 不思議な体験(3)
 

              
  ただ大人に戻っても折角オムツを当てられたのに、順調に回復してしまえばいつかはオムツを外されてしまうかもし

れないんです。いえ回復してしまえばオムツを当てている理由が無いわけですから絶対に外されてしまいます。

 だからなんとかこのままずっとオムツを当てている為にはどうすれば良いかパパは真剣に考えていました。怪我は時

間が経てば必ず回復してしまうから怪我を理由には出来ません。とすれば怪我をキッカケにしてどこかの器官が悪くな

ってオモラシが治らなくなってしまったとするか、今回の事故で再び以前のように少し知恵遅れに戻ってしまってオモラシ

が再開してしまったと言う事にして、オムツが又必要になったとするしかないと思いました。

 ママは以前のパパの中身が、実は子供だったと言う事は知りません。ですから今回また入れ替わって元に戻ったこと

も知らない訳です。だから1回目の事故で赤ん坊同然になってしまったパパにビックリもしそんなパパにがっかりもした

訳です。そのすぐ後位に2回目の入れ替わりがあれば、そのまま赤ん坊としてオムツを当てつづけられた訳ですが、

その後2年半も経ってしまってパパの中身の子供も成長して昼間のオムツが取れた時に再度の入れ替わりが起きて

しまった訳ですから、話が少しややこしいんです。

 折角しなくなったオモラシが入れ替わった途端にまたオモラシというのも何だか変です。ただ、幸か不幸か2度目の事

故の怪我がひどくてトイレに行けないために直にオムツを当てられた事です。このチャンスは逃せません。

 ただ回復するに連れて歩く事も出来る様になるだろうし、そうなった時にいつまでオムツを当てつづけていられるかで

す。

 オムツを当てる理由が無くなった時に、どういう理由でオムツを当てつづけるのか。

 でもママの方は、パパが一度取れかけたオムツを再び病院で当て始めた事をあまり気にしていないようでした。

 病院に来た時にオムツが濡れていると、それこそ以前のオムツ交換の時と同じ様に優しくパパをあやしながら赤ん坊

扱いでオムツを交換してくれていたからです。

 いつも明るく赤ん坊をあやすように声掛けしながら、オムツ交換してくれていました。勿論ウンチの場合もです。

 ひょっとしたらママはパパの頭が元に戻ってくれさえすればオムツの事はそんなに気にしていないように思えました。

 でもパパの方からそんな事を聞く訳にも行きません。

 で、パパは完全に知能が戻ったわけでは無く、少しだけ知能が戻ったとママが思うように時々は以前パパの中身が子

供だった時のように、少し幼児っぽく甘えたりぐずって見せたりしていました。病院では勿論脳神経外科での診察も有り

ましたが、パパのそんな演技までは分かりませんでした。なにしろ1回目の事故の後で実際にそういう症状が出ていた

からです。だから2回目の事故で少し記憶は戻った物の完全には戻っていないという結論になっていたんです。

 なにしろ1回目の事故の後で調べた時は本当に中身が赤ん坊に変っていたわけで、何度どんなに調べても何故赤ん

坊のようになってしまったのか分からず終いだったと云う過去が有ったからに違い有りません。

 ですから普通なら怪我が回復するに連れて直にオムツも外すのが、何も云わずにオムツにオモラシを続けていても

誰も何も言わないどころか当然のようにオムツを当てつづけられました。

 パパに取ってもあれほどオムツを当て続ける理由をいろいろ考えたにも係わらず、結果的にはママに当然のようにオ

ムツを当てて続けてもらえた事はすごく計算違いのうれしい事でした。

 こうしてオムツが外される心配が遠のくと心の中に余裕が出来て、ママのオムツ交換の時の赤ん坊扱いにも素直に甘

えられるようになりました。

 そんなある日、ベッドで寝ていたパパは、ママと看護婦さんの話し声で目が覚めました。初めは何も考えずに聞き流し

ながらうとうとしていたんですが、ところがふとママのオムツカバーと言う言葉が耳に入って来たんです。普段であれば

そんなに気にならない言葉がその時はどうしてか気に掛かって眠れずそっと2人の会話に聞き耳を立て始めました。
 

 「 ・・・・・オムツ、・・・・・。」

 「 ・・・・・オムツカバーですか、・・・・・。」

 「そうなんです。可愛そうだけどわたしもうこの人のオムツの事はあきらめたんです。そうなるとどうせもうずっとオムツ

の取れない赤ちゃんと同じなら、こんな病人用の可愛くないオムツカバーじゃあなくて、もっと赤ちゃんみたいに可愛い

プリント模様のオムツカバーってどこかに売っていないかしら。」

 「大人用の可愛いオムツカバーですかあ?」

 「ええ、どこかで売っている所はないかしら。」

 「ああ、そうだわ。この間も2階の病棟の患者さんで、まだ中学生の女の子なんですけど、その子もやはりオムツを当

てていてその子が可愛いピンク地に白いクマさんのプリイントのオムツカバーを当てていたんですよ。その子体つきは

割と大柄な女の子だったから、こんなに大きなサイズなのに可愛いオムツカバーですねって言ったら、お母さんが通販

で買ったんですって言ってたから、どこで買われたのか後で聞いときましょうか。」

 「ああ、本当。やっぱり売ってる所があるのね。だっておむつが必要なのはお年寄りだけじゃあないものね。」

 「そうですな。売ってるところが分かったら今度病院の売店にも可愛いオムツカバーを置いてくれるように言って見ます
わ。」

 「そうよね。そうしてもらえたら気軽に買えるわね。お願いするわ。」

 「はい、じゃあ後でまたお教えしに来ます。」
 

 パパはママと看護婦さんのドキドキしながら2人の会話を聞きていました。今までも布オムツは赤ん坊の物と共用して

いたので可愛いベビー柄の布オムツを当てられていましたけど、オムツカバーだけは白やクリーム、ブルーの無地の病

人用のオムツカバーばかりだったんです。

 それがもうすぐ大人サイズの可愛いプリントのオムツカバーを当ててもらえようとしているんです。しかもそれをパパが

希望したわけではなくて、それを希望したのがママだと言う事にパパは感激しました。パパにベビー柄のオムツカバーを

用意してくれると言う事は、ママは有る意味パパの赤ちゃん化を容認していると言う事かもしれないからです。
 

 パパは子供との入れ替わりの事をママに話すのは止め様と思いました。ママには悪いけど1回目の事故で知能が赤

ん坊程度になってしまったパパが月日と共に徐々に回復して折角オムツも取れかけたのに、2回目の事故で又オモラシ

が始まりオムツが取れなくなってしまった言う事にしておこう。又知能の方も2回目の事故の影響で又以前の赤ん坊の

状態に戻ってしまったけど、何故か時々ふっと突然に以前の大人の状態に戻る事があると言うようにしておこうと思いま

した。

 ずっと全くの赤ん坊に戻ってしまっては、頭の回復を喜んでくれたママに申し訳無いと言う思いと自分自身もずっと赤

ん坊の状態では疲れるだろうから、たまには大人に戻って息抜きもしたいと言う気持ちがあったんです。
 

 ママと看護婦さんの立ち話から1週間弱したある日ママがいつもよりニコニコして病院へやってきました。勿論3歳の子

供も一緒です。病室へ入ってきたママは、パパのベッドまで来ると肩から下げたトートバッグを降ろしてバッグの中から

何かを取り出しました。パパにはママがニコニコしてバッグから取り出そうとしている物が何か想像が付いていました。

そうです。1週間程前にママが看護婦さんと話していた大人サイズの可愛いプリント柄のオムツカバーだったんです。

 その時にママが持ってきた物は、薄いブルー地に小さな車の絵をプリントされた物が1枚、黄色地に可愛いひよこのプ

リントされた物が1枚、ブルーのキルテイング地の前宛ての部分に可愛いぞうさんのアップリケの付いた物、クリーム地

の前宛て部分にやはり可愛い犬のアップリケの付いたオムツカバーの4枚の可愛いオムツカバーが出てきました。

 パパは自分で想像した以上の可愛いオムツカバーがたくさん出てきたので上機嫌でした。この可愛いオムツカバーを

次のオムツ交換の時から当てられると考えるだけで、たのしく思えたんです。
 

 パパの入院していた病院は昔の建物で有るためか建て方にゆとりが有り、各病室の前毎にベランダがありそのスペ

ースに物干しが置いてあって洗濯物が干せるようになっているんです。ですから今までもそこにパパの汚した可愛い布

オムツとはアンバランスな無地の病人用のオムツカバーが干されていたんです。でも、その後は当然可愛いベビー柄の

布オムツに似あったこれも可愛いプリント柄のオムツカバーが並べて干されるようになりました。

 パッとみればどちらも可愛いベビー柄ですからオムツカバーを広げずに干してあれば本当の小さい赤ちゃんのオムツ

と思う人もいるかも知れません。でも良くみればその可愛いオムツカバーの大きさが並べて干してある布オムツと同じ

大きさである事に気付く人も結構多いいんです。病院だから余慶かも知れませんが、中にはパパの病室までやってきて

ママや看護婦さんにベランダに干してある可愛いオムツカバーを指差しながらどこで買ったのかと聞きにくるんです。

 ですから1ヶ月もしないうちに病院のベランダのあちこちに可愛い大人サイズのプリント柄オムツカバーが干されるよう

になってしまいました。元々パパの場合は身体は大きくても頭の中身は赤ん坊に近いし当分オムツは取れそうになくて

これでは赤ん坊と同じと言う事で、ママが可愛いプリント柄オムツカバーを探してくれたんですが、後からプリント柄オム

ツカバーを買い求めた人の多くは怪我や一時的な利用の人も多かったんです。やはり大人でもしばらくオムツを当てて

いると赤ん坊気分になってオムツが好きになる人が多いのかもしれません。

 こうしてパパの病室のベランダには毎日可愛いプリント柄オムツカバーが、干されるようになりましたが、すぐに病院

のあちこちのベランダに可愛いプリント柄オムツカバーが干されるようになった為に、病院内では反対に全く目立たなく

なってしまったんです。

 結局ママには、子供との2回の入れ替わりの事は話さないままに、容態も徐々に回復し退院の日が段々と近づいてき

ました。

 ですからママの方も、相変わらずパパのオモラシが治らない事や大人の会話をしているかと思うとその後は又幼児の

ような言葉使いに戻ってしまうと行った様子から、パパの頭は完全には元に戻ってはいないと思っていました。

 そして入院から3ヶ月程して、パパが松葉杖で歩けるようになるといよいよ退院となりましたが、パパは退院の時も

勿論オムツは取れないままでした。

 その後は、自宅から病院へリハビリに通うことになるのですが、当然オムツは当てたままで松葉杖を付きながらの病

院通いでしたが、いつも病院の行き返りはママが車で送り迎えをしてくれました。初めの頃は外出時のオムツ交換が出

来ないので、いつも布オムツを多めに当ててその上からパンツタイプのオムツカバーを穿いて行っていたんです。

 オムツの枚数を多く当てる為にどうしてもお尻が大きく膨らんでしまいますが、致し方ありません。

 ただ病院内のリハビリですから、皆直にパパがオムツを当てていると分かっても特に注目する人もいません。でも必

ず1回以上のオモラシはしますから帰る時までにいつもオムツが濡れています。それでも分厚くオムツを当てている為に

漏れてくる事は有りませんでした。そして何度かリハビリに通ううちに普通より大きなお尻で通う訳をそれと察した看護

婦さんがオムツ交換に空いている処置室を使うようにママに薦めてくれたんです。

 それからはオムツの枚数も減らしてオムツ交換のしやすい前開きのオムツカバーを当てて行けるようになり、オモラシ

をした時はママと2人処置室へ入ってオムツ交換が出来るようになりました。

 でもやはり病院の処置室ですから、いつもママと2人だけと言う訳では有りません。時にはパパのオムツ交換をしてい

る直横で他の患者さんが点滴をしていると言う場面もあり、そんな時はママはともかくパパの方は内心ドキドキしていま

した。でも慣れとは恐ろしい物で、パパもなんどかそんな場面を経験するうちに段々と平気になってきました。
 

 家では以前と違って、子供への手も掛からなくなりパパもオムツは取れない物の以前のようにヤンチャで手に負えな

いと言う事も無いので、ベビーシッターさんもママのお母さんももう来なくなっていました。ですからいつもパパの世話は

ママが1人でやっていました。

 勿論家でも病院で使っていたオムツとオムツカバーをそのまま使っていましたから、以前のように2階のベランダには

たくさんのオムツやオムツカバーが干し並べられていました。でも以前と一つ違うのは子供のオムツが取れたので毎日

ベランダに干されているオムツやオムツカバーは全てパパの物だったんです。

 でも病院では当たり前になっていた大人サイズの可愛いオムツカバーも自宅近辺ではすごく珍しかったんです。

 ですから近所でもパパの退院直後しばらくはいろいろと憶測をくわえた噂話が絶えませんでした。

 一度減ったベランダのオムツの洗濯物が2回目の事故の後に又増えていた事、とベランダに干されている可愛いベビ

ー柄のオムツカバーを見た近所の人達が、あそこのパパは1前の事故の後遺症で知恵遅れになって赤ん坊程度の知

能になってしまったんだって、でもその後折角少しづつ回復していたのに2回目の事故で又以前の赤ん坊状態に戻って

しまったらしいわよ。奥さんも可愛そう。

 ママも誰も近所にはそこまでの説明していないのに皆がそんな勝手な推測をしていたみたいです。

 でも誰もがそんな推測をするような状況は確かにあったので、当らずと言えども遠からずと言うような噂話ではあった

訳ですし、その方が大きな可愛いオムツカバーの説明も付きやすかった訳です。

 そしてパパにはそんな噂話は好都合でした。自分が願っていた設定そのものだったからです。

 ママもそんなパパとの生活に慣れてきていたので、特にそんな噂話を気にする事も無く又近所の奥さん達にそのうわ

さ話を否定もしなかったので、近所にも公認の大きな赤ん坊みたいになっていきました。

 やがて病院のリハビリに半年程通って少し足を引きずる所はあるものの、何とか松葉杖無しでも歩けるようになり、後

は脳神経外科に定期的に通うだけになりました。脳神経外科では、何故パパの意識が大人から赤ん坊に又その逆に

入れ替わるのかを調べていたのですが、結局原因は分からず終いで半年毎に検査をしてその時の容態を調べる事に

なっただけでした。
 

 こうしてパパが病院へ通院しなくなって自宅での生活が中心になると、通常の生活はほとんど赤ちゃんとしての生活と

同じでした。ある日いつものように、パパがオムツにオモラシをしてママにオムツを替えて貰っている時のことです。

丁度ママがパパのオムツカバーと濡れた布オムツを開いた時に、突然ママがパパに話しかけました。

 
 「ねえ、あなた?。わたし分かってるのよ。」

 「えっ、・・・。何?」

 「あなた、本当は私達のいう事のほとんどは分かってるんでしょ。」

 「えっ、・・・。あ〜、う〜。・・・・。」

 「良いのよ、ごまかさなくても。わたし、あなたが赤ちゃんを演技してるのは前から知ってたのよ。」

 「 ・・・・・・・。 」

 「実はね、わたしもずっとあなたの世話をしてるうちに、赤ちゃんのあなたが段々可愛くなってきたの。でもその時はも

うひとり小さな赤ちゃんがいたし、2人の赤ちゃんで大変だったから毎日の生活に追われてそれどころじゃあないって感

じだったし。でもその内に赤ちゃんが成長していくのと同じ様にあなたも段々と赤ちゃんを卒業して行ってオムツも取れ

たでしょう。だから本当はあなたが元の大人に戻って行くのもうれしかったけど、でも内心本当は寂しいなって気持ちも

強かったの。それが2回目の事故で入院して又あなたがオムツを当てるようになった時に、あなたには悪いと思ったけ

ど少しほっとしたの。でも怪我が治れば又大人に又オムツが入らなくなっちゃうかもって心配してたら、今度はいつまで

もあなたのオモラシが治らないじゃない。その時に実は何か変だなって気が付いたの。だって大人っぽい態度を取って

たかと思うと今度は突然赤ちゃんに戻っちゃって、でもわたしから見れば何故かそれが変なのよ。病院のお医者さんま

でやっぱり頭を打ってるからかなって思って、あなたの事に何も気が付かなかったみたいだけど。わたしには分かった

の。あなたが赤ちゃんを演じてるんだって。でも、その前から赤ちゃんのあなたの事が好きで、又1回目の事故の時見

たいに赤ちゃんにもどらないかなって思ってた位だから、赤ちゃんを演技しているあなたが可愛くて、あなたが又赤ちゃ

んに戻りたいんなら、戻して上げようって思ったの。だからこれからもあなたはずっとこのまま赤ちゃんでいて良いのよ。

これからもずっとわたしの可愛い赤ちゃんでいてちょうだい。ね、お願い。」

 「 ・・・・・・・。 」

 「それに、近所の人もこれまでの事と今でも毎日ベランダに干してるあなたのオムツを見て、皆またあなたが赤ちゃん

に戻っちゃったんだって思ってるから、隠さなくても堂々と赤ちゃんできるわよ。」

 「 ・・・・・・・。 」

 「良いわね。これからもずっとママの赤ちゃんで。もう大人のパパに戻らなくても良いわよね。」

 「う、うん ・・・・・・・。 」
 

 パパはママの突然の告白に驚くばかりでした。本当の赤ん坊になってしまった1回目はともかく、2回目の事故の後の

事は全てばれていたなんて。しかもパパ自身が赤ちゃんに戻りたかったのと同じ様にママもパパが赤ちゃんでいること

を望んでいたなんて、全く想像も付きませんでした。

 でもママの告白で一番うれしかったのは、当然ママがパパの赤ちゃんを認めてくれただけでなく、これからもずっと今

のままの赤ちゃんでいても良いと行ってくれた事でした。でもその代わりと言うより当たり前の事なんですが、もう大人に

は戻れないといわれ、ママに家に有った大人の服を全て処分された事はかなりショックでした。

 このままずっと赤ちゃんのままでいると言う事は、イコール大人には戻らないと言う事なんですけど、それでも大人の

服を処分されてしまうと、流石に大人の世界と繋がっている唯一の糸がプッツリと切られてしまったみたいで、心細い気

持ちになってしまい、その後しばらく少し鬱の状態が続きました。
 
 パパがこうしてご近所公認、ママ公認の赤ちゃんとして過ごしている間、子供の方は順調に成長して幼稚園に行くよう

になり、赤ちゃん当時自分の中身がパパと入れ替わった事なども全く知らないままに他の子供と元気に遊び興じていま

した。

 自分が物心付いた頃には又元の自分の身体に戻っていたわけですから当たり前かもしれません。又子供が物心の

付いた頃には、家にはパパではなくパパの大きさの赤ちゃんがいたわけですから、いつも大きなオムツを当てて、オム

ツが濡れると本当の小さな赤ん坊と同じ用にママに両足を持ち上げられてオムツ交換をされるそんな場面は特別な事

ではなく通常の事だった訳です。

 ですから、オムツ交換の時に大きな赤ちゃんの為の替えの布オムツとオムツカバーをママに頼まれて両手で抱えて

持って来たりといろいろ大きな赤ちゃんの世話もしていたわけです。
 

 そしてパパの方はそんな居心地の良い赤ちゃん生活に慣れて来ると、大人としての意識も段々と少なくなって来て時

に自分が本当は大人ではなくずっと赤ん坊でいたような錯覚さえ、持ち始めて来ていたんです。

 それはママだけでなく周囲の誰もが、いつもお尻にオムツを当て首からは涎掛けをして口にオシャブリをくわえている

パパの姿を見ると、当然のようにパパの事を赤ちゃん同然に思いそして当然のようにパパを赤ちゃん扱いをしてきた

からかも知れません。誰もがパパの事を、一切大人としては扱わずに赤ちゃんとしてしか扱わなくなってしまったからに

違い有りません。

 そして物心付いた頃から、パパの大きさの赤ちゃんがずっと家にいてその姿を見ている子供にとってもそれは同じでし

た。しかもこのパパの大きな赤ちゃんは、子供が大きくなってもいつまでたっても赤ちゃんのままで当然オムツも取れな

いどころか涎掛けやおしゃぶりに哺乳瓶まで使って本当の赤ちゃん生活と変らない生活なんです。

 子供はそんなパパしか見た事がないんです。

 パパの部屋の中には、天井から大きなピンクのオルゴールメリーが吊り下げられ、部屋の角には木目の大きなベビ

ーベッド、隣には白いおもちゃ箱とベビーダンスが置かれています。そのベビーダンスの上には、ガラガラやおしゃぶり

そして哺乳瓶が置かれているんです。これらのベビーグッズを見て普通に考えれば、家の中に小さな赤ちゃんがいる家

と全然変らないように思いますが、実際には全て身体の大きなパパの赤ちゃんの物ばかりなんです。
 

 ママももうそんな赤ちゃん状態のパパを望んでいたんですが、ママが思っていた以上にパパが幼児化していったのに

は、少しびっくりしていました。でもママも元々母性本能の強いタイプの女性で、本当の子供はどんどん年と共に手が掛

からなくなってしまうのに反比例して、世話のやける赤ちゃんがいつまでもいる事がうれしかったんです。

 ママも、身体は大きくてもたくさんの布オムツと可愛いオムツカバーでお尻を大きくモコモこにして、首には涎掛け姿の

パパをひざ枕で寝かせて、哺乳瓶のミルクをあげながらパパの顔を見ていると、不思議な事に本当の小さな赤ちゃんみ

たいに見えてパパがすごく可愛く見えるんです。しかも時には、哺乳瓶のミルクを飲み終える前にうとうとと眠ってしまう

事もあって、そんな時は本当にパパが小さな赤ちゃんと同じ様に見えてうとうとと眠っているパパの顔を思わず頬ずりし

てしまうんです。
 

 そんな具合ですから、ママももうパパがこのままずっと赤ちゃんのままでも良いななんて考えたりするんです。

 パパももうこの頃は、ますます幼児化して自分の事を本当に赤ちゃんだと思っているように思えます。